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知多工場の基準値を超えるアルカリ性の排水検出について(続報)

大同特殊鋼(株)知多工場(愛知県東海市)は8月21日に記者会見を行い、当工場西排水処理施設において、高濃度のアルカリ水が排水系統の地中配管接合部のシール不良部から侵入し、当該排水口から少量ずつ流出していたとご報告いたしましたが、その後、上記流出水とは別に、大雨時を中心として、高濃度のアルカリ水(pH11前後)が西排水処理施設を経て排水口から放流されていたとの指摘を名古屋海上保安部より受け、社内調査の結果、少なくとも昨年1月以降、西排水処理施設の処理能力を超えるような大雨時を中心に、高濃度アルカリ水が放流された事実があることを確認いたしました。

私たち大同特殊鋼は、鉄という素材のものづくりを通じて広く社会に貢献することを使命とし、常日頃より法令順守、ならびに企業倫理の徹底に努めてまいりましたが、今回のような事態を招いてしまいましたことは、誠に遺憾であり、深く反省しております。地元住民の皆様や関係御当局、ならびに関係各方面にご心配をおかけしたことに対し、心よりお詫び申し上げます。

また、当初8月21日の記者会見の際、認識不足に伴い、説明内容が大幅に不足しておりましたことにつきましても、深くお詫び申し上げますとともに、下記のように、続報としまして詳細をご報告申し上げます。

なお、今後二度とこのような事態が生じないよう、弊社全体で全力を傾注して改善対策を実施し、社会的信頼の回復に努めてまいります。

1.本件の概要について

去る8月20日、基準値を超える高濃度アルカリ水が弊社知多工場の排水口から検出されたとして、名古屋海上保安部より水質汚濁防止法違反容疑で強制捜査が入りました。それを受け、弊社は翌8月21日の記者会見で、当工場西排水処理施設(*1)において、高濃度のアルカリ水が排水系統の地中配管接合部のシール不良部から侵入し、当該排水口から少量ずつ流出していたとご報告いたしましたが、その後の名古屋海上保安部による事情聴取のなかで、上記流出水とは別に、大雨時を中心として、高濃度のアルカリ水(pH11前後)が西排水処理施設を経て排水口から放流されていたとの指摘を受け、社内調査の結果、少なくとも昨年1月以降、西排水処理施設の処理能力を超えるような大雨時を中心に、高濃度アルカリ水が放流された事実があることを確認いたしました。

(*1) 西排水処理施設は、平成20年3月から稼働しております。工場西地区で発生した汚水や雨水を、「汚水系統」と「雨水系統」の2系統に分けて無害化処理(以下処理と表す)する目的の施設であり、各系統それぞれで処理が完了した水は、全量リサイクル水として、スラグの冷却用や粉塵飛散防止対策用の散水などに工場内で再使用することを目的にしていました。ただし大雨により工場内に雨水が急増した場合には、雨水系統で処理した雨水を場外へ放流できる構造となっています。

2.放流の経緯について

(1) 降雨の少ない渇水時に、当工場内で使用するスラグ冷却水や粉塵飛散防止対策用の散水が不足することから、平成20年5月に設置した高濃度アルカリ水を貯留する溜め池(*2)から西排水処理施設内の処理前ピット(水槽)に当該水を汲み入れ、処理した後に工場内で再使用していました。

(*2) 当該溜め池は、スラグを路盤材に再生する工場敷地内にあり、取扱い中のスラグの石灰分と雨水が反応して生成した高濃度アルカリ水となり流入したものおよび工場建設時に埋立てに利用した地中スラグの石灰分と雨水が反応して生成した高濃度アルカリ水を溜める池

(2) 上記高濃度アルカリ水の西排水処理施設内の処理前ピットへの汲み入れは、本来、その汲み入れ先を汚水処理用のピット(汚水系処理前ピット)とすべきでしたが、当溜め池の近くに雨水処理用の処理前ピットにつながる雨水用側溝があったため、安易にそこに導水して、雨水処理用の処理前ピット(雨水系処理前ピットA)に汲み入れてしまいました。その結果、雨水系処理前ピットA内の未処理水は高濃度アルカリ水になっていました。

(3) 昨年1月以降、雨水系処理ラインの水質浄化レベルを上げる目的で、雨水系処理前ピットの未処理水の処理先を、当初の雨水系処理ラインに送るのではなく、汚水系処理ラインへの送水へと変更しました。雨水系処理前ピットAから汚水系処理ラインへの送水は、全て自動運転で行われており、この変更により、大雨時には汚水系処理ラインの処理能力をオーバーし、送水ポンプが自動停止する頻度が増し、結果的に雨水系処理前ピットAの水位が上がり、雨水系処理前ピットAから未処理水がオーバーフローする頻度が増しました。また、昨年以降、工場内の粉塵飛散防止対策の強化により、車両通行道路などへの散水量が増加し、雨水系処理前ピットAに流入する水量自体も増加しており、更にオーバーフローしやすい状況になっていました。

(4) このようにオーバーフローした未処理水につきましては、従来は、当該排水口前にある放流ゲート手前で堰き止め貯留したのち水質を検査し、法令等に合致したことを確認してからゲートを開き、排水口より放流する手順としておりましたが、その後、手順と異なる運用が行われるようになり、未処理水が高濃度アルカリ水であるとの認識がありながらも、それを分析、確認しないままゲートを開き、当該未処理水が排水口より放流された事実があることを確認いたしました。

以上、(2)の高濃度アルカリ水汲み入れ先の誤り、(3)の未処理水の送水先の浅慮な変更ならびに安易なオーバーフロー構造の採用、(4)の手順の不徹底は、いずれにおきましても会社としての管理責任に問題があったことであります。

ここに心よりお詫び申し上げ、再発防止に努めてまいります。

3.対策について

(1) 高濃度アルカリ水の雨水系処理前ピットAへの汲み入れを全面停止し、雨水系処理前ピット内が高濃度アルカリ水になるのを防ぎました(8月21日汲み入れ停止処置、31日に汚水系処理前ピットにpH粗調整後、配管にて送水できるように配管を敷設し経路変更実施)。

(2) 雨水系処理前ピットA、ピットB共にオーバーフローしない構造に改修いたしました(8月21日に堰を木板で嵩上げ、28日にコンクリートにて完全遮断実施)。応急処置を実施し放流ゲートを常時「閉」とした結果、8月20日以降、西排水処理施設から未処理水の排出はございません。なお、オーバーフローの要因となっておりました当工場の雨水処理能力の改善に関しましては、愛知県の指導のもと恒久対策を早急に実施してまいります。
本恒久対策を実施するまでの間の処理能力を超えた未処理水につきましては、全量工場内に貯留し、天候の回復後、順次適切な処理を実施し、全て工場内でリサイクル水として使用することとします。

(3) 本件は、工場全体の環境を司る部門を独立して組織せず、工場設備管理部門に属する配下部署としており、また、設備管理部門においても、当工場排水処理施設に携わる現場オペレーターの人員担保が十分でなく、担当設備の増設に伴う現場オペレーターの作業負荷の増加に対応するための増員を見過ごしていたことも原因であり、再発を防止するために、当工場内に環境監視チームを9月1日付で仮編成後、10月1日付で工場全体の環境を統括する「環境エネルギー室」を独立して新設し、増員等による環境面における管理、監督および教育機能の一層の強化を図っております。また、本社管理部門内に、本件に関する「臨時調査委員会」を9月1日付で設置し、発生原因および対策内容の検証を行っております。

4.工場全体への水平展開

今回の件をきっかけに、当工場の他の排水処理施設(2か所)について緊急調査を行った結果、工場の製造ラインからの工程水(汚水)の処理系統に雨水が流入する構造となっており、大雨時には水量が処理能力を超え、その一部がオーバーフローして放流されていたという問題点が見つかっており、愛知県の指導のもと応急対策を実施済みです(9月15日までにオーバーフロー口遮断処置実施、以降大雨時には操業調整による工程水の排水処理施設への送水停止処置を実施)。
工程水(汚水)および雨水系の分離強化、雨水系の貯水能力増強等、恒久対策を早急に進めてまいります。今後二度とこのような事態が生じないよう改善対策を実施していく所存であります。

以 上