新年明けましておめでとうございます。
年末年始をふるさとや旅先などで過ごし、心身ともにリフレッシュされたことと思います。こうしてみなさんと新年を迎えられることに、あらためて喜びを感じます。
昨年は、国内では首相交代後の衆議院議員選挙で自民党が過半数を割り、米国では大統領選挙で共和党のトランプ氏が勝利しました。今後の国政は不安定な運営となり、世界的には保護主義による分断が憂慮されます。
また、昨年の事業環境は自動車生産の下振れ、半導体・産業機械の受注回復遅れ、原燃料コストの高止まりで厳しい一年でしたが、今年は自動車生産が徐々に上向き、半導体・産業機械の受注は回復に向かう等、明るい兆しも見えそうです。
年頭にあたり、みなさんへのお願いとともに、私の所信の一端をお伝えします。
安全と健康
まず、安全面については、昨年の災害件数は非常に悪い成績となりました。安全行動3原則「止める・離れる・足場の確認」を違反した行動により被災するケースが、一昨年に続き半数もあり、安全感性が低下していると言わざるを得ない状態です。一方、2022年から始めた安全伝道師活動、リスクアセスメント活動の成果は表れ始めてはいますが、比較的低位であった非定常作業での災害が増加しました。
今年は、「挨拶・指差呼称・5S」の基本を徹底して、一人ひとりの安全感性を高めるとともに、安全伝道師活動を非定常作業にも拡大することで、「強い職場」を築いていきましょう。
健康面については、当社において転倒災害が増加傾向にあり、若年層の体力低下も懸念されるため、体力維持・向上を意識し、運動を習慣化する活動を全社展開します。職場全員で参加し、感染症予防の徹底に加えて、笑顔あふれる安全で健康な職場づくりに努めましょう。
2026中期経営計画と2030年の〝ありたい姿〞
当社は、昨年6月に「2026中期経営計画(26中期)」を公表しました。2030年の〝ありたい姿〞を「高機能素材の価値を極め、顧客ベネフィットを創造し、サステナブル社会の実現に貢献する」と定め、経営方針と3つの行動方針を次のとおり掲げて、新たな成長戦略をスタートしました。
【経営方針】トランジション・マネジメント
社会経済や産業構造の変化を事業好機と捉え、事業ポートフォリオの変革を遂行し、新たなビジネス・ドメイン(顧客×提供価値×手段)で持続的な利益成長を実現します。世の中が変わっていく中で、〝ありたい姿〞の達成に向けて「変えるべきところをしっかり変えていく」という気持ちで業務に取り組んでください。
【行動方針】
一.事業ポートフォリオの変革
新たなお客様、新たな提供価値(次世代製品、新事業など)を開発し、価値提供の手段(生産技術、サプライチェーンなど)を変革します。具体的には、知多工場一貫プロセスの能率向上、渋川工場の高合金溶解能力増強、星崎・知多第2工場の高機能素材製造能力拡充を進めます。抜本的な生産アロケーション(再配分)により、新しいポートフォリオに即した効率的で強靭な生産プロセスの整備に着実に取り組んでください。
二.経営基盤の強靭化
人的資本、組織機能、生産技術・品質マネジメントシステム、研究開発データベース、財務基盤、顧客基盤の6つの経営基盤を、〝人的資本戦略〞と〝大同DX〞の実践等により強靭化します。
〝人的資本戦略〞では、長期的な事業成長を支える「人的資本獲得」のための制度を整え、2026年までに労働生産性を20%向上します。あわせて、エンゲージメントスコアの継続的な分析システムを導入し、従業員のみなさんが能力を最大発揮できる職場環境を形成します。
〝大同DX〞の実践では、業務改革マインドとデジタル知識を併せ持つ〝DXリーダー〞240名を26中期期間中に育成します。
経営基盤の強靭化は一朝一夕には成し得ず、みなさん一人ひとりのマインドにかかっています。当社の行動指針に則り、高い志を持って誠実に行動し、自らの成長とチーム力の活用により挑戦しつづけることで、当社ならではの経営基盤を築き上げていきましょう。
三.ESG経営の高度化
ESG課題解決の価値を顕在化させ、企業価値向上・利益成長に結びつけます。環境面では、2050年のカーボンニュートラル化に向けたロードマップの着実な実行、サステナブル社会実現に貢献するビジネスの拡充、モノづくり企業としての自然との共生・環境負荷の軽減を推進します。人権の尊重・社会貢献では、経営理念・行動指針を体現する人材育成とDE&I※を推進し、腐敗防止やステークホルダーとのコミュニケーション促進に努めます。また、ガバナンス面では中長期的なガバナンスの高度化につながる施策に継続的に取り組みます。
リスクマネジメントとコンプライアンス
我々が対処しなければならないリスクは、自然災害、環境汚染、サイバーテロや情報漏洩などの情報セキュリティ、人的資本の確保、品質マネジメント、ハラスメント等の人権侵害など、多岐にわたります。事業環境の変化について、足元だけではなく将来も見据えながら、顕在化した事案に限らず潜在的なリスクも注視して対処していく必要があります。
こうしたことを背景に、昨年度までに「大同特殊鋼グループ企業倫理憲章」および「大同特殊鋼グループ行動基準」を刷新し、それらを「ガイドブック」として編集し、配付しました。各職場で、ぜひ「ガイドブック」の読み合わせを実行してください。
リスクマネジメント、コンプライアンスは事業運営の大前提であり、これらにしっかりと対処しなければ、企業としての社会的責任を果たすことができません。そして、大同特殊鋼グループのリスクマネジメント、コンプライアンスの主体者は、私たち一人ひとりであることを強く認識し、「考動」してください。
昨年、当社は「すごい未来、特殊鋼と行こう!」のキャッチコピーの下、アーティストのKREVAさんが出演する企業CMを制作し、企業認知度の向上に継続的に取り組みました。
特殊鋼は半導体、EV、エネルギー、航空・宇宙、先進医療などのあらゆる産業の素材として、人々の生活に欠かせない存在です。CMのキャッチコピーには、当社がこれからもお客様との共創により素材の可能性を追求し、「人と社会の未来を支え続けていく」という想いを込めています。全社一丸となって26中期経営計画の実現に向かって取り組み、「すごい未来」を共につくっていきましょう。
ご健康で ご安全に!
代表取締役社長執行役員 清水 哲也
※DE&I:ダイバーシティ(多様性)・エクイティ(公平性)& インクルージョン(包括性)