環境貢献への確実な一歩を―
大同特殊鋼のモーダルシフト

信頼で築くモーダルシフト

  「想いを伝えること。そのために、ひたすらお願いする…それしかないんですよ。」
  大同のモーダルシフトを進めるためには、鉄道会社や運輸会社等との協力体制が重要となる。そうした連係プレーの陣頭指揮を執る横は、まず自分の想いのたけを相手に伝えることからはじめるという。
ゼロから物流のルートを築くというプロジェクトは、協力体制を組む鉄道会社、運輸会社にとってもリスクの低いものではない。人員の確保、輸送ルートや船舶、貨車の確保などを一つ一つクリアしていかなくてはならないのだ。製品を安全に、環境にやさしい方法で最も効率よく運ぶという一つの目標に向かって、大同のために多くのスタッフを一つにまとめて動かしていく。その大仕事を成し遂げる推進力となるのは・・・
「大同のためならやろう、横のためならやろうと思っていただけるような関係。最後はそこにかかってきます。」
  つまり“信頼関係”のみだと横は語る。
  時には、相当な労力とリスクを負ってスタートした輸送ルートを、大同側の様々な状況で十分に活用することができず、協力会社から「だまされた」と怒りの声が聞こえてくることもあったという。しかし、横は事情の詳細を説明し、改善策を綿密に練り上げながら納得してもらえるまで誠意を持って説明する。また、大同のモーダルシフトを次のステージに進めるためのアイデアや、今後のルート拡大の構想などを話しながら、環境にやさしい物流の輪を広げていくという大きな夢を共有することで確かな信頼を築いていくのである。
  こうして推し進めてきた大同のモーダルシフトであるが、ルートを完成させるためには、それを利用し製品を受け取るユーザーの理解も必要となってくる。モーダルシフトの影響を最もうけるのは実は納入先企業であるといえる。環境にやさしいという人類最大のメリットを考慮したとしても、実際にはモーダルシフトによって、納期のタイミング等に変化が現れるのだから、その点を理解していただいた上で取引を行わなくてはならなくなる。
  ユーザーニーズを満たすという企業責任と、さらにモーダルシフトを進めていくという社会貢献、その両方を果たすために必要となるのは、やはりユーザーとの信頼関係だといえるだろう。大重量の特殊鋼製品を日本各地に運ぶそのルートの根幹には各方面と大同特殊鋼の信頼関係という太いパイプが横たわっているのである。


次なる一手のその次へ―

  「モーダルシフトについては、次なる手を打ち続けることが求められているんです。」
  横は苦笑を浮かべ、そう語った。
  昨年春に施行された『改正省エネ法』では、年間3000万トンキロ以上の荷物輸送実績のある荷主は、年間1 %の輸送時CO2排出量削減の義務が課されている。大同は、年間輸送量から見てこの法に従う義務があるということになる。つまり、年間1%のCO2排出量削減とういうテーマのもとに、横らは常に新しい“ひらめき”を探す必要があるのだ。
  そこで、横らは、まずは社内で各工場担当者との情報交換を積極的に行い、モーダルシフトにつながるヒントをつかみ、実現していこうと試みている。
  また、企業間での情報交換にも積極的に取り組んでおり、鉄鋼業界内での交流はもちろんのこと、食品、電子機器、住宅部材等、まったく他業種の企業とも互いにモーダルシフトへの取り組みやアイデアについて情報交換を行っている。こうして、様々な視点からモーダルシフトという発想を見つめなおす機会を得ることが、横 らの“ひらめき”という名のアイデアにつながっているのかもしれない。
「私たちにできることは、日々の業務の中でできる効率化と環境負荷低減を実現していくことだと考えています。年間1%のCO2排出量削減を物流の分野で確実にクリアすること。その一歩が地球環境への貢献につながっていると思っています。」
  終わりなきノルマを課せられているとも取れる横 らの果たすべき責任は重い。
「次なる一手のネタを探すのが大変なんですよ。」
と苦笑しながらも、モーダルシフトを中心に、物流分野でやるべきことはまだまだあるはずだと横は力強く語る。その言葉には、次なる一手、その次の一手・・・と環境貢献へ続く確かな一歩がすでに隠されているのかもしれない。


 
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