
「僕らのひらめきから始まることも多いんですよ。」
大同の物流を統括する立場にある横は、モーダルシフトへの取り組みについてそう語る。この“ひらめき”という名のアイデアが大同の物流を効率化へと導いてきたともいえる。
横が物流室に配属された8年前、陸上輸送に代わり船での輸送比率をどれだけ拡大できるかというのが一番の課題であった。しかし、大同の生産拠点が中部地方を中心としている点と、同じ中部地方や関東を中心にユーザーマップが広がっている点を考えれば、必ずしも船輸送の比率を拡大していくことばかりが効率的な方法だとはいえない。しかし、一方でトラックの重量規制が厳しくなり、やはり陸上輸送から他の方法への転換を迫られてもいた。環境面、コスト面で効果の大きい輸送を実現するためには、船での輸送に続く次なる一手が必要不可欠となっていた。
そこで2003年、大同ではモーダルシフトのあらたな一手として丸棒鋼材の鉄道輸送をスタートさせる。船舶での輸送よりも短距離間を効率的に結ぶという目的には最適な手段であったが、実はこれ以前に大同には鉄道輸送を採用し、ほどなく取りやめたという経緯があった。この時、とくに問題となったのは貨車に積み下ろしする際の製品品質への影響である。せっかく性能・品質を極めて完成した製品をユーザーに届ける輸送の段階で傷つけてしまっては本末転倒だ。特に、あらゆる分野のシビアなニーズに応え、重要な部分を担うことの多い大同製品にとっては、積み下ろしの際にできたほんの些細な傷でさえも、最終製品の品質・性能を大きく左右しかねない。こうした理由から、鉄道輸送はあえなく取りやめとなったのである。
しかし、横らは得意の“ひらめき”で大同ではタブーとなっていた鉄道輸送を復活させるというアイデアを実行に移した。「なぜ、また貨車で運ぼうとするのか?」という疑問の声も多かったが、横らのひらめきの裏には、鉄道輸送を“使える輸送手段”に変換できるという確信があったのである。
「以前の鉄道輸送の経験で、改善すべき点ははっきりしていました。ですから、そこを改善すれば良いだけだったんですよ。」
その言葉通り、改善のためのアイデアによって鉄道輸送を可能にし、大同はさらなるモーダルシフトを成し遂げたのである。
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