大同特殊鋼株式会社(社長:清水 哲也)は、モーターコア材として一般的に使用されている電磁鋼板※1を上回る飽和磁束密度※2をもつモーターコア用軟磁性材※3を開発しました。
モーターコアには一般的に電磁鋼板が使用されていますが、モーターのさらなる小型化、軽量化、高出力化を実現するため、より高い飽和磁束密度をもつ材料のニーズが高まっています。一方、最も飽和磁束密度が高い軟磁性材料であるパーメンジュール※4は加工性が悪く、高価であることが課題でした。そこで当社は、電磁鋼板に比べて高い飽和磁束密度を保有し、かつ加工性に優れる材料を開発しました。この材料をモーターコアに適用することで、モーターの小型化・高出力化と加工コスト低減に貢献します。
1.背景
現在、自動車をはじめとしたモビリティの電動化が進められており、自動車ではバッテリー電動自動車やハイブリッド自動車が、航空機では電動航空機、ドローン、eVTOL(電動垂直離着陸機)などが挙げられます。これらのモビリティは重量が大きいほど電力効率が落ちてしまうため、モーターをはじめとする各部品の小型化、軽量化が強く求められています。
モーターは主に銅線、磁石、モーターコアで構成されており、モーターコアは一般的に打ち抜き加工した電磁鋼板を積層して製造されています。しかし、電動自動車、電動航空機、ドローン、eVTOLなどに望まれる小型・軽量で高出力なモーターを実現するには、より高い飽和磁束密度をもつ材料が求められていました。一方で、最も飽和磁束密度が高い軟磁性材料であるパーメンジュールは、打ち抜き加工性が悪く、高価であることから、新たな材料の開発が期待されていました。
2.特長
(1)電磁鋼板に対して飽和磁束密度が高い
開発材は電磁鋼板に対して飽和磁束密度が高く、モーターの高出力化、小型化設計が可能になります。(図.1、3)
(1)加工性が良い
開発材は打ち抜き加工が可能な材料です。(図.2 試作した積層コアの例)これにより順送プレスでの製造が可能になります。
3.用途
電動自動車、航空宇宙用途、ドローン、eVTOL などに使用される小型、軽量化、高出力化を指向するモーター用コア材。
4.その他
本開発品は2024年10月29日から31日にかけて幕張メッセで開催されるメタルジャパン東京に出展します。
用語説明
※1 電磁鋼板 | 鉄とケイ素からなる軟磁性材料。 |
※2 飽和磁束密度 | 磁性体が十分大きな外部磁場を受けた際に達することができる最大の磁束密度。 |
※3 軟磁性材 |
磁石にくっつく材料。 外部の磁界を取り除くと速やかに磁気がなくなり、元の状態に戻る材料。 |
※4 パーメンジュール |
鉄とコバルト、バナジウムからなる軟磁性材料。 軟磁性材料の中では、飽和磁束密度が最も高い材料。 |
以上