大同特殊鋼株式会社(社長:清水哲也)は、自動車部品の熱処理に対応した連続式真空焼鈍炉の初号機を発売し、浜名部品工業株式会社(所在地:静岡県湖西市、社長:杉浦雄輔)から受注しました。
本設備は、ヒーター加熱式を採用することで、エネルギー源を電気のみとし、化石燃料を一切使用しない熱処理炉です。CO2排出係数がゼロのカーボンフリー電力を使用することで、お客様のCO2排出量ゼロを可能とします。また、従来の雰囲気焼鈍炉では、化石燃料由来の炉内雰囲気※1を必要としていましたが、炉内を真空にすることで従来の設備と同等以上に酸化および脱炭を抑制しながら、雰囲気ガスの使用量をゼロとしています。
当社はこれまでも、主に磁石製造などにおける焼結工程向けに、連続式真空熱処理炉を販売しています。本設備の提案にあたり、当社が培ってきた真空技術を、鍛造部品や電磁鋼板といった自動車部品の焼鈍工程向けに応用しました。今回の受注は、本設備による完全カーボンニュートラル熱処理の提案が、CO2排出量削減に取り組む自動車部品サプライヤーに評価されたものです。
また、当社は工業炉のカーボンニュートラルを推進する技術として、今回の「電化×真空」のほかに、「水素バーナー+炉内雰囲気のCO2分解」の開発を進めており、「カーボンニュートラルSTC炉」の2027年以降の販売開始を計画しています。
当社はこれらの技術を提案していくことで、サプライチェーン全体のカーボンニュートラル推進に貢献していきます。
1.背景
カーボンニュートラルが求められる社会情勢の中で、雰囲気炉方式の熱処理炉はCO2を多量に排出するため、CO2排出量を抑えた熱処理技術の実現が強く求められていました。そこで、当社が主に磁石製造向けに販売していた連続真空焼結炉や真空浸炭炉で培ってきた真空技術を、鍛造部品や電磁鋼板等といった自動車部品の焼鈍向けに応用することで、本設備の発売ならびに受注に至りました。
当社は気候変動対応が経営の最重要課題の一つと捉え、その一環として、2021年に「Daido Carbon Neutral Challenge」を策定し、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指した取り組みを進めています。そのスコープ1として、2030年までに燃料の燃焼によるCO2排出量を2013年度対比24%削減する目標を掲げています。また、スコープ3を前提としたサプライチェーン全体の温室効果ガス削減に向け、エンジニアリング部門は省エネ製品のサプライヤーとして、お客様が使用する設備のCO2排出量削減に貢献します。
2.対応可能処理
恒温焼鈍(IA)※2、球状化焼鈍(SA)※3、磁気焼鈍 等
3.連続式真空焼鈍炉の特徴
(1)高い省エネ性とカーボンニュートラル
- ヒーター加熱方式の採用
CO2排出係数がゼロのカーボンフリー電力を使用することで、完全カーボンニュートラルの熱処理を実現。 - 真空雰囲気
雰囲気を必要としないため、雰囲気ガス由来のCO2排出なし。
また、従来の雰囲気炉は生産がないタイミング(休日等)でも多量のエネルギーを用いて雰囲気ガスの生成と炉温維持が必要だったのに対し、真空雰囲気炉はその必要がなく、大幅な省エネ化が可能 。
(2)作業環境の改善
炉体全体が水冷構造で周囲への放熱がないため、従来設備に比べ大幅に放散熱量を低減し、快適な作業環境を実現。加工機など他の設備と同じ建屋等への設置も可能。
(3)安全性
可燃性ガスを使用しないため、炉の異常燃焼の発生リスクなし。
そのため、自動立ち上げ機能を使用することで、設備立ち上げの為の前夜勤等の変則勤務が不要。
(4)設備保全性
高温強度に優れるカーボンをロールやヒーター等に使用することで、従来の金属製部品と異なり800℃超の高温域の処理においても炉内部品の長寿命化を実現。
4.製品ラインナップ
ニーズに応じて連続式、モジュール式、スリムバッチ式※4で提案が可能。
<参考>
用語説明
※1 炉内雰囲気 | COやH2を含む還元性の雰囲気 |
※2 恒温焼鈍(IA) | 鋼材に熱処理を施し鋼の組織を均一に整えることで、切削しやすい状態にすること。 |
※3 球状化焼鈍(SA) | 鋼材に熱処理を施し鋼に含まれる炭素を小さな粒状へ変化させることで、鋼を軟らかく鍛造しやすい状態にすること。 |
※4 スリムバッチ式 | 少量の製品を高サイクルで処理可能な設備 |
以上