当社の渋川工場から出荷し、群馬県内の工事に使用された鉄鋼スラグ、鉄鋼スラグを含む砕石及び直下の土壌から各々の溶出量及び含有量の基準を超えるふっ素及び六価クロムが検出された件につきまして、現在までの対応状況、内部調査の結果及び再発防止に向けた取り組みについてお知らせします。
本件に関しましては、地域住民の皆様や関係各方面の方々に多大なるご迷惑をおかけしておりますことに衷心よりお詫び申し上げます。
1. 経緯
2013年6月、渋川工場が製品化した鉄鋼スラグを路盤材として使用した渋川市施設内市道の土地形質変更時の事前調査におきまして、基準を超えるふっ素及び六価クロムが検出されたことが群馬県・渋川市議会で報告され、2014年1月には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づく群馬県の立入検査を受けました。以後、渋川市、独立行政法人水資源機構、国土交通省関東地方整備局、群馬県が既に完工した道路工事等を調査したところ、表1の結果が各ホームページに公表されました。
表1 ( )内は最大の検出値、-未調査
公表日 | 施工時期 | 調査対象 | 調査母数 | ふっ素超過件数 | 六価クロム超過件数 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
溶出量 | 含有量 | 溶出量 | 含有量 | |||||
基準値 0.8mg/l |
基準値 4000mg/kg |
基準値 0.05mg/l |
基準値 250mg/kg |
|||||
渋川市 | 2014年 6月30日 |
1995年~ 2009年 |
スラグ | 38 | 32(13) | 35(24,000) | 3(0.23) | 0 |
土壌 | 38 | 28(8.7) | 2(4,600) | 4(0.13) | 0 | |||
水資源 機構 |
2014年 3月27日 |
2004年~ 2009年 |
スラグ | 8 | 8(2.5) | 8(19,000) | 3(0.085) | 0 |
土壌 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | |||
国土交通省 関東地方 整備局 |
2014年 3月28日 |
2008年~ 2013年 |
スラグ | 6 | 1(4.4) | 0 | 0 | 0 |
土壌 | 1 | 1(2.0) | 0 | – | – | |||
群馬県 | 2014年 5月9日 |
2009年〜 | スラグ | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 |
土壌 | – | – | – | – | – |
基準値は スラグ:JIS A 5015 環境安全品質基準 土壌:土壌汚染対策法における指定基準
<調査結果の詳細は下記ホームページをご参照下さい>
2. 当社の対応
(1)対策本部等の設置
本件が渋川市議会で報告された2013年6月以降、翌7月から含クロム鋼スラグ製品、2014年1月から鉄鋼スラグ製品全量の製造販売を中止するとともに、東京本社内に社長直轄の対策本部を設置して、2014年1月までに販売された76万トンの鉄鋼スラグ製品の最終需要家及び使用場所の調査を開始いたしました。
さらに2014年3月に問題解決の促進を図るべく対策促進本部を本社に設置し、①基準超過品が出荷された原因の解明、②販売された鉄鋼スラグ製品の需要家・使用場所の調査及び必要な対応、③行政に対する報告、④社内内部統制・ガバナンスの調査・改善を進めております。また販売業者との不適切な取引と新聞に報道された事実についても調査いたしました。
(2)出荷済み製品への対応
渋川工場で2014年までに出荷した鉄鋼スラグ製品76万トンのうち、自治体、行政等の工事に路盤材として使用された工事箇所につきましては、現在関係者と協力しながら真摯に対応しているところです。
具体的には、独立行政法人水資源機構の群馬用水管理用道路につきましては関係者の強い要望を受け、緊急性も高いと判断し、現在進行している対策(路盤材の撤去および復旧など)について同機構と協議し相応の負担を行うこととしました。その他の工事箇所につきましては、生活環境上の支障を除去する措置が必要な場合は、現場の状況を考慮し、県のご指導を受けながら、販売先や使用先と適切な対応を協議したうえで、誠意をもって協力させていただく考えです。
3. 基準超過品が出荷された背景と原因
(1)検査管理体制の整備状況
渋川工場における鉄鋼スラグ製品の品質管理は、次の体制にて行っておりました。
・2009年6月以前
この時期の品質管理は粒度や膨張率などの物性値を中心に行っており、ふっ素、六価クロム等の重金属については出荷管理基準を定めていませんでした。
・2009年7月以降
渋川工場のマニュアル整備にあたり、重金属 5項目(ふっ素、六価クロム含む)について土壌環境基準相当の出荷管理基準を制定し、年1回の計量証明事業者による検査(含有量・溶出量)を実施導入しました。2009年7月からは天然砕石と混合して鉄鋼スラグを製品化しており、ふっ素についてはロット毎にエージング処理した段階でふっ素含有量を測定、基準以内に収まる混合率を決定し、その作成した模擬サンプルで含有量を測定したうえで、混合作業を委託もしくは自ら実施して出荷していました。
(2)基準超過品の出荷を防げなかった理由
今回の基準超過問題の原因は、渋川工場の鉄鋼スラグ製品の品質管理体制、具体的には検査の方法と頻度、管理基準の設定などにおいて基準超過品を確実に把握し、出荷を防止するための品質管理が不十分であったためと結論づけました。結果として、鐵鋼スラグ協会ガイドラインに定める会員会社としての責務を果たせておりませんでした。
県、市などの調査結果において、基準超過は、2009年6月以前の出荷品に集中しています。すなわち、表1記載の渋川市等による調査母数(スラグ)合計58件のうち、2009年7月以降の出荷品での基準超過は1件です。
渋川工場のマニュアル整備により、出荷管理基準を制定する前の2009年6月以前は、環水土第44号通知(平成13年3月28日) (*)に路盤材として利用された再利用物は土壌環境基準の範囲外であるとの記載があり、重金属に関する品質管理は不要と誤って判断してしまい、重金属についての出荷管理基準が無い状態で運用していたため、土壌環境基準を超過するスラグが出荷されました。
天然砕石と混合して製品化した2009年7月以降は、ふっ素を出荷管理基準に入れ、上述の通り模擬サンプルで含有量を測定したうえで出荷していましたが、溶出試験は年1回の計量証明事業者による定期検査のみであり、多様な鋼種を溶解する渋川工場において1件の溶出量基準値超過が発生したものと考えます。なお、2009年7月以降には六価クロムの基準値超過は発生しておりません。
(*)環水土第44号
第2 土壌環境基準の項目追加等の内容 (3)再利用物の取扱い ②再利用物への適用
(Ⅱ)道路用等の路盤材や土木用地盤改良材として利用される場合には、再利用物自体は周辺の土壌と区別できることから、これらには適用しない。
(3)業務提携先との取引内容について
2009年7月から2012年6月まで、天然砕石との混合、需要家への製品説明、工事場所の事前調査、工事完了後のトレース等を委託する業務提携先に対して、鉄鋼スラグ代金の月総額を上回る販売管理費を支払っていました。この支払は、当社に代わって生産・販売業務を行ってもらう対価の趣旨でした。なお、2012年7月以降は、当社で生産・出荷するスキームに切り替えております。
4. 再発防止に向けた取り組み
(1) 渋川工場における鉄鋼スラグ路盤材の生産停止
渋川工場における鉄鋼スラグ路盤材の生産及び出荷は、2014年1月から停止しており、製品の環境安全品質を完全に確保できるまで停止を継続します。
鉄鋼スラグの資源化は、廃棄物の発生抑制、ならびに資源の有効活用という社会の要請に応える重要な事業活動ですので、社会的責任を果たせるよう、生活環境に影響を与えないため、また安心安全を確保するための品質管理を徹底してまいります。
(2)鉄鋼スラグ製品 品質安全総点検の実施
2014年3月から6月までの4ヶ月間をかけて、鉄鋼スラグ製品の取り扱いについて、社内外の基準やガイドラインに即した事業活動が行われているか否かを、渋川工場以外の拠点を対策促進本部が調査・確認しました。現時点で、改善すべき異常は見つかっておりません。今後も定期的に調査・確認を行ってまいります。
5. 反省と処分
今回、渋川工場が生産した鉄鋼スラグ製品の問題につきまして、今回の事実を厳粛に受け止め、役員全員に平成25年度決算における役員賞与を支給しないことといたしました。
また県当局の当問題に対する判断が出た時点で、経営責任について判断いたします。
6. 今後の対応
今回の経験を経営の大きな反省材料とし、上記の再発防止はもちろん、地域社会の信頼回復に向けた取組みを徹底してまいります。なお、出荷済み鉄鋼スラグ製品の使用状況の調査につきましては今後も継続して真摯に対応する事をお約束申し上げます。
以 上