文字のサイズ

画期的な高弾性チタン合金「TNCZ」発売

大同特殊鋼株式会社(社長:嶋尾 正)は、従来材に比べ、飛躍的にしなやかさ及び冷間加工性(成形性) を改善した画期的なチタン合金「TNCZ」(大同記号 DAT58)を開発し、サンプル提供を開始しました。2014年10月から線材(ワイヤーロッド)の量産出荷を開始します。

TNCZは医療用に開発したニッケルおよびバナジウムを含まないβ型チタン合金*¹で、毒性の指摘の少ない元素(チタン、ニオブ、クロム、ジルコニウム)から構成されています。また、従来のチタン合金にはない、しなやかさと複雑な形状にも加工可能な成形性を併せ持っており、従来のチタン合金では実現できなかったデザインにも対応できる優れた材料です。

TNCZの用途は主にカテーテルガイドワイヤー、ガイドピン、ステントなどに代表される医療機器を想定していますが、眼鏡フレームや自動車部品、時計ケース等、様々な分野での活用を目指して今後お客様と用途開発を進めていきます。

*1 β型チタン合金:冷間加工性のよいチタン合金

1.背景

当社は約30年にわたり、棒鋼・線材形状のチタン・チタン合金製品を提供しています。これまでも眼鏡フレーム、自動車部品等の各分野において、冷間加工用チタン合金、切削加工性に優れたチタン合金等の各種ニーズに応じた当社独自のチタン合金をお客様に提供してきました。

チタン合金は生体適合性が高いという特長を持ち、人工骨などの医療材料にも用いられています。しかし、既存のチタン合金(Ti-6Al-4V合金等)は高強度である一方でヤング率*²が高く、しなやかでない、変形抵抗が高い(成形性が劣る)など改善の余地がありました。この問題点を解決するチタン合金はニオブ等の高融点金属元素から構成される必要がありますが、一般的な溶解方法では高融点金属の溶解が困難であり、偏析が懸念されるため極少量生産での対応に限られていました。

*2 ヤング率:値が低いほど柔軟性がよいことを示す

当社は独自の先進的溶解技術(LIF炉、LIF:Levitation Induction Furnace)を活用することで偏析の無い大型インゴットの製造を可能とし、お客様の生産性向上に寄与できることになりました。また、高融点金属元素からなる合金設計により誕生したTNCZはヤング率が低く、変形抵抗も低い(成形性が優れる)など今までの課題を克服した、お客様の新たな商品開発をこれまで以上に広げることを可能にするチタン合金です。

2.特長

構成元素 毒性の指摘の少ない元素(チタン、ニオブ、クロム、ジルコニウム)を使用。ニッケルフリー、バナジウムフリー
しなやかさ ヤング率が低く、しなやかで柔軟性に優れる。(従来比*³ ヤング率25%低減)
優れた成形性 変形抵抗が低く、冷間での成形性に優れる。 (従来比*³ 変形抵抗20%低減)

*3 従来比:既存のβ型チタン合金(Ti-15-3-3-3)との比較

3.用途および効果

形状 製造可能寸法
線材(ワイヤーロッド) 直径5.5~7.0mm
線 (医療用ワイヤー) 直径3.0mm以下(日本精線株式会社が製造*4)

*4 医療用ワイヤーについては当社の連結子会社である日本精線株式会社と共同で用途開発

4.販売目標

2017年度 10億円

5.特 許

特許取得済:日本国内「特許第5045185号」、米国「US8512486」、欧州「EP1842933」

以 上