大同特殊鋼株式会社(社長:小澤 正俊)は、従来から真空浸炭の課題とされていた、歯車端部などの過剰浸炭組織の発生(炭化物析出)を防止する「DEG鋼」を開発しました。DEG鋼は、独自に解明した真空浸炭の基礎理論をもとに成分調整することで過剰浸炭組織の発生を防止し、それに起因する強度低下を抑制します。真空浸炭処理されたJIS鋼 SCr420に比べ、DEG鋼の疲労強度は約2.4倍に向上し、自動車部品の飛躍的な高強度化が可能となります。真空浸炭の基礎理論は、DEG鋼のほか、操業条件のシミュレーションソフトなどにも応用され、当社製真空浸炭炉“ModulTherm”(モジュールサーモ)の高機能化を達成しています。
今秋から自動車部品向けにDEG鋼のサンプル供給を開始するとともに、当社滝春テクノセンター(名古屋市南区)に設置済の“ModulTherm”(量産テスト炉)に浸炭モジュールを2基増設し、DEG鋼試作処理などに向け能力を増強します。当社は、素材と設備の両面からのシーズ提案を通して、真空浸炭技術の一層の普及に貢献していきます。
1.背景
浸炭処理とは鋼に炭素を浸入させ、表面に炭素濃度の高い層を作る処理です。疲労強度と耐磨耗性が要求される歯車などの自動車部品には、JIS鋼 SCr420などに浸炭処理を施した材料が使用されます。真空浸炭は、従来のガス浸炭と比較し高強度の部品を短時間で処理でき、CO2排出量削減も可能なことから、次世代の浸炭技術として注目を集めています。 しかし、歯車端部などの鋭角部に過剰浸炭組織が生じ、強度が低下する現象が指摘されるなど、本格的な普及には課題が残されていました。2.DEG鋼シリーズの特長
DEG鋼 (Daido’s steels Encouraging vacuum-carburizing in developing stronger Gears)
(1) 真空浸炭処理時の過剰浸炭組織の発生を防止する成分設計
(2) 疲労強度 60度の鋭角部を有する部品の場合、JIS鋼 SCr420 ガス浸炭処理材対比30%、真空浸炭処理材対比2.4倍向上
(3) JIS鋼 SCr420、SCM420、SNCM220の代替用鋼種をシリーズ化 (強度、焼入性を調整)
3.真空浸炭炉“ModulTherm”の国内製造・サービス体制を確立
独ALD社から技術導入し、販売中の“ModulTherm”について、使用部材のJIS規格化、調達先見直しを進め、純国産炉としての製造・サービス体制を確立しました。シミュレーションソフトによる操業平易化とあわせて、販売拡大への足掛りとします。以 上
参考資料
(1)1.鋭角部過剰浸炭組織比較写真、2.疲労強度
(PDF:80KB)
(2)真空浸炭の基礎理論(真空浸炭の炭素浸入機構)
(PDF:17KB)