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工具鋼製品-合金原料急騰による価格スライド制の導入について

大同特殊鋼株式会社(社長:小澤 正俊)は、昨年来の合金原料高騰を受け、数次にわたる工具鋼製品の価格改定を実施してきました。当社は、人員削減等の省力や生産の合理化による最大限の原価低減を進めてきましたが、昨年来の合金原料の高騰は、自助努力による吸収の限界を超えていることから、製品への価格転嫁を行ってきました。一方、本年に入りモリブデン、バナジウム、タングステンの3原料が極端に高騰し、この先もさらなる上昇が見込まれます。

当社は今回のこの合金原料急騰に緊急対応するために、2005年7月納入分から工具鋼製品の価格スライド制を導入致します。価格スライド制の対象となる合金原料は、前述のモリブデン、バナジウム、タングステンにコバルトを加えた4原料とし、工具鋼の全鋼種が価格スライド制の適用となります。

価格スライド制については、欧米諸国では古くから「サーチャージ」の名称で実施されておりますが、当社におきましても一部先行実施しているハイス(高速度工具鋼)のコバルト、モリブデン、及び構造用合金鋼のモリブデン、バナジウムのサーチャージ制に続き、工具鋼の全鋼種で価格スライド制を実施せざるを得ない状況となり、今回適用拡大することを決定しました。

合金鉄を主体とする鉄鋼原料の高騰は、中国市場での鉄鋼需要が極めて旺盛であることと、その結果、鉄鋼の需給バランスが世界的規模で崩れているためと推定され、現状ではこの状況が暫く続くと考えております。

当社の生産状況は、主要需要先である自動車産業および各種産業での好調を受け、現在フル操業を実施しておりますが、すべての注文にご満足いただける状況ではなく、メーカー在庫の圧縮はもより、流通各社にも在庫のミニマム運営をお願いし、現在の状況に対応しております。

今回の価格スライド制は、原料購入価格の変動を製品価格に反映するものであり、特にバナジウム、タングステンは入手自体が困難な状況下にあり、このご理解が得られなければ工具鋼製品の生産規模そのものを見直す必要に迫られております。

このような原料事情について広く市場のご理解を賜り、今後とも安定供給を目指していく所存でございます。なお、海外向け価格につきましても、国内向けに準じて価格スライド制を適用します。

1.価格スライド制の対象と実施時期

対象 紐付き需要家および店売り向けすべての工具鋼製品
実施時期 2005年7月納入分から
適用鋼種 (例:代表鋼種)

鋼種区分 JIS鋼種名(ブランド鋼名)
冷間金型用鋼 SKD11系(DC11, DC53)、SKS3系(GOA)他
熱間金型用鋼 SKD61系(DHA1, DHA)、SKT4系(GFA)他
プラスチック型用鋼 NAK、SCM系(PX5)他
ハイス SKH51系(MH51)、マトリックス系(DRMシリーズ)他

2.代表的合金原料価格高騰状況(参考)

鉄鋼原料名 04/4(A) 04/10 05/4(B) 上昇率
(B/A)
MoO3: モリブデン (メタルスウィーク)$/Lb 15.0 20.4 32.5 217%
Fe-V: バナジウム (メタルブリテン) $/kg 27.1 30.0 123.0 454%
Fe-W: タングステン(メタルブリテン) $/kg 10.6 11.5 33.1 312%

3.価格スライド制の算定方法

05/ 7- 9月 納入価格   04/10-05/2 ⇒ 05/3-5 の原料価格変化分を反映

05/10-12月  〃        〃    ⇒ 05/6-8 の原料価格変化分を反映

以降は3ケ月ごとに価格スライド制により納入価格を見直します。

以 上