世界初!TiAl合金製精密鋳造部品
ターボ用 タービンインペラー

Interview   
 

 1987年。この年の国際ガスタービン学会(日)に一大センセーショナルが巻き起こる。その研究成果は、川崎重工(敬称略)が大同特殊鋼と共同で発表したものであり、“夢の素材”といわれたチタンアルミ合金(以下TiAl合金)を、世界ではじめて実用素材としてターボ用タービンインペラー(以下インペラー)に用いる路を拓くものだった。
 このトピックスが一部メディアに掲載されたこともあって、大同には自動車メーカーや重工メーカーなどから少なからず問合せをいただくことになる。
TiAI合金製タービンインペラー
▲ TiAI合金製タービンインペラー
 果たしてTiAl合金、三菱重工(敬称略)と大同の共同開発を経て、1999年1月、インペラーとして世界ではじめて市販車に搭載された。
 現在、TiAl合金は国内外から熱い注目を浴び、新たなる製品への応用に向け着々と進化を続けている。
 『夢の素材がまたひとつ・・・』。素材開発史に、大きな足跡を残したこのTiAl合金製部品実用化の道のりを辿ってみる。
 

夢の新素材 TiAl合金

 1980年代後半当時、TiAl合金製品の開発は、いわばちょっとしたブームだった。
 素材メーカーはもとより、重工、機械、自動車メーカーなどが、この“夢の素材”の製品化にやっきになっていた。
 “軽量化”という時代のニーズに応え得る、優れた高温強度、耐久性等を兼ね備えたTiAl合金は、その反面、脆さと加工のしにくさが実用化への大きなネックになっていた。加えて製造工程における、ごくわずかな不純物の混濁でも、著しい性能劣化をみせるなど、TiAl合金は良くも悪くも、まさしく“夢の素材”であったのだ。
 そんな“難題”に大同も取り組んでいた。材料研究、プロセス研究などいくつかのカテゴリーごとに研究チームをつくり、様々な角度からTiAl合金の実用化への路を模索していたのだ。野田は振り返る。
 「この時点では、シビアな目標があるわけでもなく、期待の新素材チタンを、どういう過程を踏んだら工業製品に実用化できるのかというのを、それこそ暗中模索的にいろいろと研究してみようといった感じでした。」
 そんなある日、かねてからお取引きいただいている川崎重工から、ある相談が持ちかけられる。TiAl合金研究は思わぬ展開に駒を進めることになるのである。
 

世界初を夢見て

 「単車の、より早いレスポンスを実現するために、TiAl合金はどうだろうか?」川崎重工からの申し入れは、単車用に、TiAl合金製インペラーを実用化できないかというものだった。
 目の付け所は野田らも同じだった。超高温下での高速回転運動にさらされつづけるインペラーは、自動車や単車の中でも最も過酷な部位の一つである。しかもその回転の効率性が、レスポンス、燃費、環境負荷などを左右する重要機能でもある。
 従来、主に耐熱超合金が用いられていた部位であり、この分野での大同には大きな実績もあった。しかし、もし超合金よりはるかに比重が軽く、強度、耐久性で遜色のないTiAl合金製インペラーが開発できれば、革命的な回転効率を生むインペラーになるのではないか。野田らに迷いはなかった。
 「今まで世界中の誰も成し得ていない、革命的なTiAl合金製インペラーを作るんだ!」

 
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