「単車の、より早いレスポンスを実現するために、TiAl合金はどうだろうか?」川崎重工からの申し入れは、単車用に、TiAl合金製インペラーを実用化できないかというものだった。 目の付け所は野田らも同じだった。超高温下での高速回転運動にさらされつづけるインペラーは、自動車や単車の中でも最も過酷な部位の一つである。しかもその回転の効率性が、レスポンス、燃費、環境負荷などを左右する重要機能でもある。 従来、主に耐熱超合金が用いられていた部位であり、この分野での大同には大きな実績もあった。しかし、もし超合金よりはるかに比重が軽く、強度、耐久性で遜色のないTiAl合金製インペラーが開発できれば、革命的な回転効率を生むインペラーになるのではないか。野田らに迷いはなかった。 「今まで世界中の誰も成し得ていない、革命的なTiAl合金製インペラーを作るんだ!」