Daido Carbon Neutral Challenge

Daido Carbon Neutral Challenge 〜素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます〜

当社グループは、経営理念である「素材の可能性を追求し、人と社会を支え続ける」を実現するため、気候変動対応が経営の最重要課題の一つと捉えています。その一環として、「Daido Carbon Neutral Challenge」を策定し、2030年度でのCO2排出量を2013年度対比で50%の削減、2050年でのカーボンニュートラル実現を目指した取り組みを進めています。

2030年にむけて、2013年度対比 CO2排出量50%の削減、2050年に向けて、社会の脱炭素技術、インフラ整備に合わせカーボンニュートラル実現を目指す

3つの方針

当社は、「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」の遵守は当然のこと、気候変動対策に関する公共政策にも積極的に関与し、排出量削減に向けた取り組みを行っていきます。

(一社)日本鉄鋼連盟が策定・公表しているカーボンニュートラル行動計画は、当社方針・目標とも合致しており、引き続きこれを支持します。

カーボンニュートラルへ向けた3つの方針画像

CO2排出量実績と目標

大同特殊鋼グループCO2排出量削減目標の図

Scope1とScope2の推移

大同特殊鋼グループCO2排出量削減目標の図
大同特殊鋼グループCO2排出量削減目標の図

(*1)21年度の関連グループ会社の実績には海外は含まれていません。

Scope3

当社では、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に基づいて、算定可能なScope3のカテゴリー1,2,3,4,5,6,7,13について算定を行いました。

2023年度は全体として1,441千tのCO2排出量が確認され、その中でも特に「カテゴリー1:購入した製品サービス」の割合が77%と最も多く、その排出量削減に向け、主要なお取引先様との「パートナーズミーティング」を通じて、当社向け製品のCO2排出量の算定、削減を行う活動に取り組んでいます。

今後も、お客様でのCO2排出量削減に貢献できる製品(EV車や水素関連製品に使用される高機能材料など)の比率を高めていけるよう製品開発などに取り組んで参ります。

Scope3 カテゴリー別CO2排出量

千t‐CO2/年

カテゴリ― 2023年度  
1.購入した製品・サービス 1,116 原料、資材の購入金額または購入重量にCO2原単位を乗じて算出
2.資本財 56 設備投資額にCO2原単位を乗じて算出
3.Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 187 電力・燃料の購入量にCO2原単位を乗じて算出
4.輸送・配送(上流) 56 省エネ法報告の燃料使用量及びカテゴリー1購入量にCO2原単位を乗じて算出
5.事業から出る廃棄物 15 副産物種別毎の廃棄量にCO2原単位を乗じて算出
6.出張 3 各交通手段別使用金額にCO2原単位を乗じて算出
7.雇用者の通勤 3 各交通手段別使用金額にCO2原単位を乗じて算出
13.リース資産(下流) 5 対象リース面積にCO2原単位を乗じて算出
合計 1,441  
  • ※集計範囲:大同特殊鋼単体において該当するカテゴリーのみで算出
  • ※算定方式:LCIデータベース IDEA Ver.3.4 (2024/04/30) 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 IDEAラボ、及びサプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.4)環境省を使用
    2023年度排出量実績は第三者検証対象項目です

また、エンジニアリング部門の主要省エネ4製品のお客様でのCO2排出量削減貢献量は34,500t/年(2023年度)と算定しています。

製品名 CO2削減貢献量t/年
プレミアムSTC® 1,100
DINCS®(高効率省エネ燃焼部品) 3,000
モジュールサーモ®(省エネ型真空浸炭炉) 21,000
下水汚泥炭化炉 9,400

CO2排出量の第三者検証

温室効果ガス排出量検証報告書

TCFD提言に基づく情報開示

当社は、2021年11月にはTCFD提言に賛同を表明し、TCFDの提言に基づき、ガバナンスを更に強化するとともに戦略を明確化し、気候変動が事業にもたらすリスクと機会を分かりやすくお伝えすることで、さらなる情報発信・開示の充実に取り組んでいます。

ガバナンス

気候変動に関わる基本方針や重要事項、リスクや機会などを検討・審議する組織として、従来のCSR委員会を再編し、2022年4月に「サステナビリティ委員会」を設置しました。当委員会は社長執行役員を委員長とし、ここで審議、決定した事項を取締役会に上程します。

また、環境、気候変動リスク対応組織として、サステナビリティ委員会の運営部門として「ESG推進統括部」を2023年1月に設置しました。その配下にCO2排出量削減の企画、全社への展開及び推進強化を図る組織として従来のCO2削減プロジェクトを「地球環境対策推進室」と改め、設置しました。

取締役会で審議・決定された議案は、各事業部門に展開され、それぞれの事業運営に反映します。

気候変動に関わる内容を検討・審議するフロー図

戦略

気候変動が当社に与えるリスク・機会とそのインパクトを把握し、当社の中長期的な戦略のレジリエンスと、さらなる施策の必要性の検討を目的に、2030~2050年についてシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオおよび4℃シナリオ※)を参照しています。リスク、機会の抽出は幅広く行い、「発生する可能性が高いもの」と「発生したときに影響が大きいもの」の観点から、当社の事業に及ぼす影響が高いリスクと機会を選定し、対策を検討しました。また、今回分析の対象としなかったリスク・機会についても、継続的に注視していきます。

各リスクと機会への対策を検証した結果、脱炭素に向かう社会変容に対して、中長期経営計画の基本戦略を軸に、高機能材料や革新的な環境対応エンジニアリング製品を開発し販売拡大していくことで、企業価値を向上させていくことができると結論しました。当社戦略はレジリエンスを有していると評価しました。

※1.5℃シナリオ:気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ
4℃シナリオ:気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ

TCFDシナリオ分析
シナリオ 要因 変化 当社への影響 当社の対策
1.5℃ EV化の進展 EV化の進展によるエンジン/排気系部品の需要減少 リスク
  • 内燃機関車(ICE)向けの需要は2030年までは微減程度と見込むが、EV化の進展で、2030年以降、大幅な減少が想定される。
  • 今後の成長市場である、CASE(自動車)、半導体関連製品、クリーンエネルギー分野の売上を拡大し、持続的な事業成長を果たす
EV化の進展による高機能材料の需要増 機会
  • EV化の進展で、2030年時点ではICE向け需要の減少を上回る高機能材料の需要が想定される。
    ※e-Axle部材、バッテリー部材、制御系部品などに使用される高強度鋼、磁性材料等
  • 各製品ニーズに対応した材料開発
  • 需要増加に対応した生産能力向上
  • 次世代自動車向けの新製品・新事業の立ち上げおよび市場参入
GHG排出規制を含む各種規制の強化 再生可能エネルギーの利用による電力コスト増加 リスク
  • 再生可能エネルギー使用比率増加により電力コストが増加する。
  • 省エネ、製品歩留まり向上などによるコスト改善で電力コスト増を吸収
  • 再生可能エネルギーの自社導入
カーボンプライシング導入 操業コストの増加 リスク
  • カーボンプライシング導入により操業コストが増加する可能性がある。
  • CO2削減投資と全電力の再生可能
    エネルギー化によりコスト負担を回避
電炉材の需要増 機会
  • 脱炭素要請の強化や低排出製品の志向の高まりなどを受け、相対的にCO2排出量の少ない電炉材の需要増加が見込まれる。
  • 当社開発の先進イノベーション電気炉「STARQ®」から製造した「低CO2排出特殊鋼鋼材」を積極拡販
  • 再生可能エネルギーへのシフトを進め、更なる差別化を促進
  • 正確なCFP提示による顧客ニーズの取り込み
スクラップ調達コストの増加 スクラップ調達コストの増加 リスク
  • 世界的に電炉材ニーズが高まり、高品位スクラップ需要が増加する。
  • これにより、価格の高騰や調達難の影響が出る可能性がある。
  • お客様と連携したスクラップ回収スキームの拡大、および低品位スクラップの利用が可能な技術確立により、価格高騰の抑制と必要なスクラップ量の確保
環境対応や新エネルギー関連技術の普及 革新的な環境対応エンジニアリングの需要増 機会
  • 脱炭素に向けて、エネルギー効率の向上に資する投資が増えることで、当社の環境対応エンジニアリングの需要が高まる。
  • 当社ブランド省エネ製品の積極拡販
    ※STARQ®、DINCS®、モジュールサーモ®、プレミアムSTC®炉 等
  • 顧客ニーズに合わせたエンジニアリング製品(水素燃焼工業炉等)開発の推進
水素関連技術・製品の需要増 機会
  • 水素社会の進展により、耐水素脆化用鋼などの高機能材の需要が高まる。
    ※水素ステーション、燃料電池車、水素内燃機関などに使用される高機能材
  • 各製品ニーズに対応した材料開発
  • 新規のお客様、市場の開拓
4℃ 気象災害の激甚化(急性) お取引先様や生産拠点が被災する事による操業停止リスク リスク
  • お取引先様や主要工場が自然災害に見舞われ、操業が停止する可能性が高まる。
  • お取引先様と連携したリスク管理や適正な在庫確保などのBCP対策を推進
  • 主要工場は浸水対策を継続実施中

大中小の影響度は、現時点で当社の前提、想定に基づいて評価したものです。
今後、状況に応じて変化するものと捉えており、継続的に評価の見直しを行います。

  • 大:事業及び財務への影響が非常に大きくなることが想定される
  • 中:事業及び財務への影響がやや大きくなることが想定される
  • 小:事業及び財務への影響が軽微であることが想定される

リスク管理

気候関連リスクの管理プロセスとして、「サステナビリティ委員会」を通じて、気候関連リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践していきます。

「サステナビリティ委員会」で分析・検討した内容は、取締役会に報告し全社で統合したリスク管理を行います。

気候関連リスクについて、ESG推進統括部を中心としてシナリオ分析を実施しました。当社の事業戦略を鑑み、リスク・機会の発生可能性と影響度を踏まえて、気候関連リスクの優先順位付けを行い、影響度の高い事項に注力して対策に取り組みます。今後も、「サステナビリティ委員会」を運営するESG推進統括部が、リスク・機会を継続的に確認・検討していきます。

気候関連リスクの管理プロセスの図

指標と目標

大同特殊鋼では、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CO2)の総排出量を指標として削減目標を設定しています。

2021年4月にDaido Carbon Neutral Challengeを公表し、「2013年度対比2030年CO2排出量50%削減、2050年カーボンニュートラル実現を目指す」という削減目標を策定しました。

さらに、2026中期経営計画策定の際に、対象範囲を、国内及び海外の関連会社を含めた大同特殊鋼グループに拡大しました。グループ一丸となって、CO2排出量削減活動を推進しています。

Daido Carbon Neutral Challenge

取り組み事例

省エネによるCO2排出量削減

当社では、省エネによるCO2削減のために、各工程におけるエネルギーのムダ・ロスの徹底削減を行うとともに、着熱効率を向上させる酸素燃焼技術、加熱炉の断熱性を向上させるセラミックファイバー化などによる改善、また、草の根改善として、放散熱ロスを抑制させる断熱材の増し保温施工、工場エアーの漏れ対策などの改善に取り組んでいます。

事例:酸素燃焼技術

酸素燃焼は高い火炎温度が得られ、燃焼用空気を必要としないことから、燃焼用空気を昇温させるエネルギーが不要となるため、当社での取り扱いが多い1,000℃を超える温度領域で、よりエネルギー効率を向上させることができます。製鋼工程で使用する取鍋予熱装置に引き続き、均熱炉、連続鋳造タンディッシュ予熱装置などへ適用を拡大しています。

酸素燃焼技術 イメージ図

事例:加熱炉、熱処理炉への遮熱塗料塗布

加熱炉、熱処理炉は燃料使用率が高く、温度域も高いため、炉体からの伝導伝熱による熱の損失も大きく、加えて、周辺環境温度が上昇し作業環境も悪化します。そこで、低放射遮熱塗料を塗布し、放射熱損失を削減することで、エネルギーロスの抑制および作業環境温度の低減を図ることができることから、適用範囲を順次拡大しています。これまで取り組んできた耐火物のセラミックファイバー化の適用継続・拡大と組み合せることでさらなるCO2削減に取り組んでいきます。

遮熱塗装による高岡概要の図

環境スペシャルサイト(地球温暖化対策)

地球温暖化対策

脱炭素電源活用によるCO2削減

当社では、CO2削減のために、電力の脱炭素化として、CO2フリー電力の購入、再生可能エネルギーの導入として太陽光発電設置などに取り組んでいます。

事例:CO2フリー電力の活用、および地域への普及拡大への貢献

2021年度よりCO2フリー電力購入を開始し、2023年度は 17万t-CO2/年*1削減しました。2030年に向けて購入量を拡大するとともに、中部電力ミライズ株式会社殿と共同で、地域への再生可能エネルギーの普及に貢献していきます。

*1:2022年度の電力排出係数にて算出

CO2フリー電力イメージ図

事例:太陽光発電の活用

大同特殊鋼グループでは、再生可能エネルギーの導入として太陽光発電パネルの設置を進めています。

社名 設置場所 設置年度 発電容量
kW
CO2削減量
t-CO2/年
大同特殊鋼(株) 渋川工場 2022 100 64
大同特殊鋼(株) D-BASE Motohama
(旧元浜寮:愛知県東海市)
2024 50 27
フジオーゼックス(株) 本社・静岡工場 2023 3,985 1,874
フジオーゼックス(株) 藤沢工場 2024 488 169
フジオーゼックス(株) FUJI OOZX MEXICO 2023 1,000 654
下村特殊精工(株) 松尾工場 2015 466 255
下村特殊精工(株) 富士見工場 2023 143 59
日本精線(株) 枚方工場 2016 11 7
桜井興産(株) 荒子工場 2023 129 12
大同マシナリー(株) 本社 2024 830 303
理研製鋼(株) 柿崎工場 2024 1250 513
泉電気工業(株) 岩槻倉庫 2013 18 6

CO2排出量削減に向けた
設備投資費

2025年3月期における社内炭素価格はCO2 1トン当たり5,800円です。

CO2排出量削減に向けた設備投資費のグラフ

GXリーグへの参画

経済産業省主導による産官学の協働を通じた2050年のカーボンニュートラル社会の実現と経済社会システム全体の変革に向けて、2023年度より本格稼働した「GXリーグ」に参画しています。

GXリーグロゴ

CDPへの回答

2021年度にCDP気候変動へ初めて回答し「B-」の評価を取得しました。2022年度から水セキュリティに対しても回答し、2023年度(2024年2月)は、気候変動と水セキュリティともに「B」評価を得ました。今後も更なる情報開示の充実に取り組んでいきます。

CDPロゴ

トランジション・ボンド

トランジション・ボンド