1.背景
大同特殊鋼株式会社(本社:名古屋市東区/社長:石黒 武)が開発した耐熱チタン合金DAT54(以下、DAT54)が、日本で開発された耐熱チタン合金として初めてアメリカの航空宇宙用材料規格(AMS:AEROSPACE MATERIAL SPECIFICATION)に登録されました。AMSは航空宇宙分野で使用される多くの材料が登録している材料規格であり、発電プラントやOil&Gasなどの様々な分野においても利用されております。
従来、耐熱チタン合金は、航空宇宙分野で高温強度が要求される航空機エンジン内のコンプレッサーディスク*1やブレード*1などの回転部材として使用されておりますが、その多くは欧米を中心に開発されたものでした。今回登録されたDAT54は、成分組成と熱処理条件の最適化により世界最高クラスの耐熱性を有しており、航空機エンジンの高効率化を目的とした高温化や軽量化への対応が可能で、今後、航空機の燃費改善への貢献が期待されます。
2.DAT54の位置付け
耐熱チタン合金は合金開発の進歩とともに耐用耐熱温度が上昇しており、現在では約600℃が最高耐用温度となります。耐熱性を表す特性として、高温でのクリープ特性*2があり、DAT54は、最高クラスの耐熱性を有する耐熱チタン合金となります。
【材料明細】
■成分組成:Ti-5.8Al-4.0Sn-3.5Zr-2.8Mo-0.7Nb-0.35Si-0.06C (mass%)
■熱処理 :固溶化処理+時効処理
■対象部材:ジェットエンジンのコンプレッサーディスクやブレードなどの回転部材
3.登録規格
- 規格:AMS6952TM
- 名称:Titanium Alloy, Forgings 5.8Al-4.0Sn-3.5Zr-2.8Mo-0.7Nb-0.35Si-0.06C,
Solution and Precipitation Heat Treated - 材種:耐熱チタン合金(ニアα型*3)
- 成分:UNS R56443
- 登録:2018年3月
【用語説明】
*1 コンプレッサーディスク、ブレード:ジェットエンジンの中で、高温高速で回転することで、タービンと呼ばれる燃焼機に高温高圧の流体を供給する部品。耐熱性だけでなく、疲労特性などの信頼性が要求される。
*2 クリープ特性:高温で負荷を与えたときに、低い応力でも徐々に変形する現象に対する耐性。
*3 ニアα型:チタン合金は高温強度に優れるα相と、熱処理性に優れるβ相とで構成される。ニアα型は、β相が少量で高温強度に優れるα相が主体のチタン合金。
以 上